●無二斎十手 無二斎が発明したという不思議な秘武器。それは他では決してみることは出来ない独特の妖しい存在である。第一のユニークさはその独特のファームにあり、空をかける高速ジェット戦闘機のような不思議なスタイルである。一説ではかつて神代の上空を飛び回っていた天之浮舟を模したものであるとも言う。 『二天記』には「十手器」との記載されているが、これは「ジッテキ」と読める。つまりこれはようするに「ジェット機」のことではあるまいか。と言う事になるとこれは神代と現代を結ぶ不思議な機械である事になる。つまり柄先についている赤い房は背後に噴出するジェット噴射そのものである……。
●変化
無二斎十手の本質は如何なるものであったか? 実を言えばその実物は残っていない。鉄人十手流が伝えた十手の本歌は存在し、それがほぼ無二斎十手と殆ど同じであると思うが、鉄人の多少の工夫があった可能性がある。無二斎十手の本質を明かす絵図は水田無右衛門の絵図と一角流伝書の絵図がある。これらをみると鉄人十手器と大体同じであるが、十字を固定する長い爪楔がみられない事である。ただ水田無右衛門の絵図を見ると小さな留め金と十手棒部分に留め爪が描かれており、ここに留め金を入れて固定するのではないかと思われる。その大きさ形は鉄人十手器と異同があるが原理は同じであり、鉄人十手器は無二斎十手をさせたものであると思われる。一角流伝書の絵図は留め金は描かれておらず、また留め金のない骨董品も見受けられる(ただ本歌と確定できる実物を未だ確認できないでいる)。無二斎十手器は無二斎が工夫したものと思われるので、工夫の過程で幾つかの種類のものが工作されたのではなかろうか。留め金がないと実戦的に用いる時に少し遣りにくいが房をクロスに巻き付けて使ったとも言われるいる。これも少し遣りにくいのである時期に留め金までが工夫、工作されたのだろう。それを発展したのは青木鉄人であったと思われる。そしてそのはてに折り畳み型のマロホシ十手が工夫されたのだろう。
●名称
無二斎は道具の名前を「十手」もしくは「實手」、「十手器」(小倉碑文)などと呼んでいたようである。江戸期の十手とぶつかる名称であるが、この様な名称で当時呼んでいたという事は当時江戸期捕り物十手的な道具は存在しなかった為と考察できる。
また捕り物十手が「十手」と言われたのはなぜだろう。無二斎十手は正に「十字の手」であり、「十手」であるが、捕り物十手が何故に「十手」と呼ばれたの不詳である。
これは無二斎十手を原点としてそれを発展させたものである為と考察され、よって古典名を残して「十手」となったと考えられるだろう。別の名称(「鉤手棒」とか)を付けなかったのは無二斎の功績を讃える為ではなかろうか。
無二斎十手器(復元)2 |
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